福岡地方裁判所 平成8年(わ)161号 判決 2000年3月15日
主文
被告人を死刑に処する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、他人に生命保険を掛けて殺害し、その生命保険金を取得しようと考え、甲田一郎(以下「甲田」という)と共謀の上、乙山花子(当時二〇歳、以下「乙山」という)を被保険者、甲田を受取人とする生命保険契約を締結した上、乙山を殺害するとともに、その殺害を無理心中と装うために丙村二郎(当時二七歳、以下「丙村」という)をも殺害することを企て、次の各犯行を行った。
第一 被告人は、平成二年一二月二五日午後六時三〇分ころから同月二六日午前一時ころまでの間、福岡県田川市またはその周辺市町村内で、殺意をもって、丸太様の物で、乙山の頭部等を多数回殴打し、さらに、刃体の長さ約一〇センチメートルの果物ナイフ(平成一一年押第一一六号の1)で、同女の前頸部を三回突き刺し、前頸左上部及び前頸左中央部に各一か所の刺切創、並びに前頸下部に一か所の刺創等の傷害を負わせ、右頸部三か所の刺切創及び刺創による血液の左右肺内吸引に基づく窒息のため、そのころ、同所において、同女を死亡させて殺害の目的を遂げた。
第二 被告人は、第一記載の日時ころ乙山を殺害した後、福岡県田川郡添田町又はその周辺市町村内に駐車中の普通乗用自動車内で、殺意をもって、同車助手席に乗車していた丙村に対し、同車運転席から、包丁で、同人の右側頸上部を少なくとも一回突き刺し、右側頸上部刺切創の傷害を負わせ、間もなく、同所において、右傷害による血液の左右肺内吸引に基づく窒息のため、同人を死亡させて殺害の目的を遂げた。
(証拠)<省略>
(確定裁判)
1 事実
平成六年三月三〇日浦和地方裁判所宣告
事後強盗罪により懲役三年八月
平成六年八月二日確定
2 証拠
前科調書(乙一三)、判決書謄本(乙一一)
(適用法令)
罰条 いずれも平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前(以下「改正前」という)の刑法六〇条、一九九条
刑種の選択 いずれも死刑選択
併合罪の処理 改正前の刑法四五条後段、五〇条、四五条前段、四六条一項本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪につき死刑に処し、他の刑は科さない)
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法一八一条一項ただし書
(量刑理由)
一 犯行に至る経緯等
1 被告人と共犯者甲田一郎及び被害者乙山花子との関係
被告人は、昭和五九年八月から六三年一一月にかけて恐喝罪により北海道の月形刑務所で受刑中、同じく受刑中であった丁川三郎と知り合い、出所後の平成元年春ころに同人と再会し、同人を介してAとも知り合った。被告人は、出所後姉のいる東京でパチンコ店店員の職に就いたが長続きしなかった。同年夏ころ、被告人は右丁川、Aに対し美術品のオークション会社をやろうと持ち掛け、同年一一月ころから、実母C(以下「C」という)所有の福岡県田川郡川崎町大字田原所在店舗兼居宅において、右丁川、Aと共に、「Bオークション」という屋号で美術品のオークション事業の開業準備を始めた。同月下旬ころ、被告人は右丁川に対し、Bオークション開業の目的は、生命保険を掛けた従業員を殺害して保険金を入手する保険金殺人である、と打ち明けた。同じころ、被告人は、本件共犯者甲田一郎(当時二〇歳、以下「甲田」という)、本件被害者乙山花子(当時二〇歳、以下「乙山」という)他二名を従業員として採用した。しかし、被告人は、右丁川が被告人及び右Aに無断で去ってしまったこと等の理由から同年末ころには保険金殺人計画及びBオークション開業を断念した。
一方、Bオークション開業断念後も甲田は川﨑町所在のC所有の前記店舗兼居宅に出入りし、平成二年一月中旬ころから被告人と甲田との交際が始まった。
2 犯行計画
被告人及び甲田は、平成元年末以降も定職に就かず、収入もない状態で、平成二年三月七日に生じた前記店舗兼居宅の火災により同年五月一一日にCが入手した火災保険金約二七〇〇万円のうち約七〇〇万円を同年八月ころに貰うなどして生活していた。そのような中で被告人は、平成二年八月中旬ころまでに、新たに事業を起こし、雇用した従業員に生命保険を掛け、これを殺害することにより保険金を得ることを企て、その旨甲田に持ち掛けて協力を求めた。
甲田は、同年八月二六日、北九州市八幡西区陣原三丁目<番地略>所在のD(以下「D」という)を借り受け、同室を事務所兼居宅として、同年九月中旬ころから「コウダ宝石」の屋号で宝石・貴金属等のカタログ販売業を営み始めたが、営業実績は殆ど無かった。
被告人は、保険金殺人の犯行後自己に疑いがかかる危険性を低減すべく、自己と全く面識のない人間を被保険者にしたいと考えていた。そこで、被告人は、甲田に指示して、同年九月二〇日から二二日にかけて新聞広告により「コウダ宝石」の従業員を募集した。しかし、応募がなかったことから、甲田は、被告人と話し合いの上、やむを得ずBオークションの開業を準備していたころに従業員として雇い入れたことのある乙山を勧誘して雇用した。
一方、甲田は、同月一〇日前後ころ、住友生命北九州支社折尾支部所長荒木久美恵に対し、自己の生命保険契約の締結を申し込むと共に、近い将来雇う予定の従業員にも生命保険を掛けたいと持ち掛けた。しかし、保険会社からの勧誘なしに積極的に保険を申し込んできたこと、保険会社が当初示した保険契約案よりも多額の保険金額を求めたことなど、異例の申込であったために不審に思った右荒木から契約締結を拒否された。そこで甲田は、同年九月一二日、朝日生命保険相互会社田川東営業所外務員中村由子に対し、生命保険契約の締結を申し込み、同年一〇月一九日に甲田及び乙山の契約申込書を作成した。同年一一月中旬ころ、右契約の内容を審査していた朝日生命保険相互会社本社から同社田川東営業所所長本田良一に対し、保険金の受取人を甲田ではなく乙山の親とするよう指示があり、右本田はその旨甲田に伝えたが、甲田から、受取人を甲田に出来ないなら契約しないと強く言われたため、結局、甲田の要求どおりに契約することになった。そして、同年一二月一日、甲田と朝日生命保険相互会社との間で、保険契約者及び保険金受取人甲田一郎、被保険者乙山花子、普通死亡保険金額五〇〇〇万円、災害死亡保険金額一億円の生命保険契約(経営者大型保険)が締結された。
さらに、被告人及び甲田は、乙山を殺害するに当たり、犯行の発覚を防ぐべく、甲田がテレホンクラブに電話して通話相手を呼び出し、この者による乙山の交通事故死とそれを苦にした自殺を装うこととした。右計画に基づき、甲田は、平成二年一〇月ころから、福岡県内所在のテレホンクラブ数店に数度にわたって電話し、同店に来店していた客数人と自ら会い、又は乙山を引き合わせるなどして、同女と一緒に殺害する男を捜していた。右のように甲田と会っていたテレホンクラブの客の中に、丙村二郎(当時二七歳、以下「丙村」という)も含まれていた。
そこで、同年一二月二三日ころ、被告人及び甲田は、被告人が丙村の自動車を同人の知らないうちに持ち出して乙山をひき殺し、その後丙村が交通事故によって乙山を死亡させたことから自殺したように擬装して、同月二五日に乙山と共に丙村をも殺害することを計画した。
右の間、被告人は、当初思い描いていたように、被告人と全く面識のない人物を被保険者とすることが出来ず、甲田からも生命保険契約が円滑には締結できなかったことを聞いていたため、犯行計画を実行に移しても疑われる危険が大きいと考えた。被告人は、同年一二月一八日前後ころには犯行の中止を甲田に提案したこともあったが、甲田から、ここまで準備したから実行しようと言われ、結局犯行を中止することはなかった。
3 第一の犯行に至る経緯
平成二年一二月二五日昼前後ころ、丙村・甲田・乙山の三名はDで会っていたが、同日午後三時前後ころ、甲田が乙山を福岡県田川郡赤池町大字赤池<番地略>の乙山の自宅まで送りに行ったため、丙村は同室内に一人で残された。その後、被告人は、Dに行き、同室に一人でいた丙村を口実を設けて連れ出し、同人を乗車させた同人所有の普通乗用自動車(白色トヨタクレスタ、車両番号筑豊五五つ〇〇〇〇、以下「クレスタ」という)を運転して、同日午後六時三〇分ころ、予め甲田と落ち合うことを打ち合せていた福岡県田川郡赤池町大字赤池<番地略>の赤池駅に行った。他方、甲田も、乙山を一旦自宅まで送った後、再度同女と待ち合わせた上、軽四輪乗用車(黒色三菱ミニカ・エコノターボ、車両番号北九州四〇つ〇〇〇〇、以下「ミニカ」という)に同女を同乗させて赤池駅前に来た。このころまでに被告人と甲田は、被告人が白石のクレスタを自由に持ち出すことができなかったことから、乙山殺害計画のうち、交通事故を装うことについてはあきらめていたが、乙山の殺害そのものについてはこれを実行する予定であった。右四名は、右二台の自動車に分乗したまま、被告人運転のクレスタが先導して同所から更に約二〇分間走行し、福岡県田川市または周辺市町村内某所に、互いに相手方自動車が見えない位置にクレスタとミニカを停めた。そして、被告人は、丙山が移動できないようクレスタの鍵を取り上げた上、同車を降り、ミニカを停めたところに行き、ミニカから降りた乙山を同所から少し離れた殺害現場に連れて行き、他方、甲田は、丙村の乗っているクレスタを停めたところに行った。被告人は、右殺害現場にあった丸太様の物を拾い、判示第一のとおり乙山の頭部を多数回殴打して転倒させ、頭部に八か所の挫創を生じさせたが、同女を死亡させることが出来なかった。そのため、被告人は、隅々様子を見に右殺害現場に戻って来た甲田に対して果物ナイフと水を買ってくるよう指示した。約三〇分後、甲田は、判示第一記載の果物ナイフを買って戻り、同ナイフを被告人に渡した。そこで、被告人は、右ナイフで引き続き判示第一の犯行に及んだ。
4 第二の犯行に至る経緯
甲田は、前記の通り被告人に果物ナイフを渡した後、道路に流出した乙山の血を買ってきた水で洗い流し、丙村がいるはずのクレスタを停車させた場所にミニカで移動した。しかし、丙村は、判示第一の犯行中、自ら所持していたクレスタのスペアキーを用いてその場から逃走していた。被告人は、判示第一の犯行後、前記殺害現場に戻ってきた甲田から丙村が逃走したことを聞き、前記のとおり丙村が乙山と顔見知りであることから、丙村により第一の犯行が発覚することを恐れたが、同人の所在を探すあてもないので、乙山の遺体をミニカの後部座席に乗せ、甲田とともに、ミニカでDに戻ることにした。
平成二年一二月二六日午前零時ころ、被告人及び甲田がD付近路上に着くと、丙村が同所にクレスタを停めているのを発見した。そこで、被告人及び甲田は、第一の犯行の発覚を防ぐべく、当初の計画どおり丙村を殺害することを再度決意し、甲田がDに入って、同室から丙村を刺殺するための凶器である包丁を取ってきて被告人に渡した。
甲田は、同女に好意を持っていた丙村に対し、「どこかに行こう」などと言って誘い、甲田の運転するクレスタに丙村を同乗させて走行し、被告人は、右クレスタをミニカで追尾した。被告人らは、福岡県田川郡添田町又はその周辺市町村内某所でそれぞれ自動車を停車させ、被告人がクレスタの運転席に乗り込み、甲田は一旦後部座席に移った後、降車した。運転席に座った被告人は、助手席に座った丙村の右頸部に前記包丁を突き付ける等して脅迫し、丙村に「セックスがしたくて女をさそうたらバカにされたのでやってしまいましたゆるして下さい」との、遺書を装ったメモを書かせた。被告人は、丙村が右メモを書き終えた直後、判示第二の犯行に及んだ。
5 犯行後の状況
被告人は、犯行後、判示第二の犯行場所又はその周辺地域において、被告人が乙山の遺体をクレスタの後部座席に搬入し、被告人がクレスタを、甲田がミニカを運転して福岡県田川郡赤池町大字赤池<番地略>所在の赤池総合運動公園内駐車場に移動した。被告人は、同所において、丙村の遺体をクレスタ助手席から運転席に移動させ、前記遺書が発見されるよう右遺書を公園の柵の柱の上に置き、平成二年一二月二六日午前零時ないし一時ころ、証拠隠滅を企図して、クレスタ内にガソリンをまんべんなく撒いた上、所携のライターで着火して、車内を燃焼させた。その後、被告人及び甲田はミニカで東京方面に逃走したが、丙村が持っていたメモ紙から甲田の身元が判明するおそれがあったことから、同月二八日右メモ紙を取りに戻り、その際、前記遺書を入れていた免許書入れをクレスタの車内に置き直し、翌二九日ミニカを処分した。以降被告人らは東京在住の被告人の実姉から金銭的援助を受けるなどして逃亡生活を続けていた。そして、被告人は、平成五年一一月三日に別件で逮捕されるに至ったが、甲田の消息は不明である。
二 特に考慮した事情
1 犯行動機について
本件は、保険金入手目的で乙山を殺害し、続いて乙山殺害犯に擬装するために白石をも殺害したという事案である。関係証拠によれば、被告人は昭和六三年一一月二四日に月形刑務所を出所した後、競艇等に金銭を費消する一方、一時期パチンコ店の店員として働いたことがあるだけで、定職について真面目に働いていた形跡はなく、安易に一攫千金を目論み、人命を軽視して金銭目的で一人のみならず二人もの人を殺害するその動機はまことに短絡的かつ自己中心的であるというほかない。また、本件の準備段階において、被告人らが想定していたとおりに事態が運ばず、思い直して犯行を中止する機会が何度もあったにもかかわらず、結局本件殺害に及んでいるのであって、そこには金銭欲のためには犯行の発覚をもいとわない、犯行への強い決意が窺われる。また、被告人が甲田に犯行の中止を提案したのも、当初の計画と異なり、乙山という自己とつながりのある人間を殺害することにより自己に疑いの目が向けられる危険が高まったからであって、道義的観点から犯行を思いとどまろうとしたものではなく、極めて巧利的である。右のとおり、動機に関して酌量の余地は全くない。
2 犯行計画について
被告人らは犯行を計画するに際し、被害者を殺害する時刻、場所、殺害方法等について事細かく打ち合せるまでのことはしていない。しかしながら、被告人は平成元年一二月ころ保険金殺人を企図したことがあり、遅くとも平成二年八月中旬ころには甲田に本件犯行の計画を持ち掛け、その後甲田の協力を得て被保険者及びこれの擬装殺害者を探すなどして準備を整えていたものである。被告人が丙村の自動車の持ち出しに失敗したにもかかわらず、殺害計画を翻すことなく、丙村を口実を設けて連れ出すなど、臨機応変の対応をしている。さらには、乙山を殺害している間に丙村から逃げられた後も、隅々丙村を発見すると、僥倖到来とばかり、当初の予定どおり丙村殺害を完遂するに及んでいるのである。このような事情に照らすと、本件は、周到とまではいえないものの、計画性は極めて高い。これに加えて、被告人の公判供述及びその他の関係証拠によれば、本件犯行を企図・主導したのは被告人である。
3 犯行態様について
乙山殺害の態様は、何も知らずに共犯者甲田に呼び出された乙山を、丸太様のもので何度も殴り付け、倒れて動けなくなった同女にとどめをさすべくわざわざ甲田に果物ナイフを買ってこさせ、頸部を数回突き刺しているのであって、執拗かつ残虐極まりない。また、丙村殺害の態様も、無理心中擬装のための遺書を書かせた直後に、まさか殺害されるなどとは夢想だにしていない同人の不意をついて包丁を首に深く突き刺すというものであり、人の生命を奪うことに対しなんら躊躇することのない、冷酷非情なものである。本件被害者らは、まだ若い上、なんの落ち度も無い。にもかかわらず、殴られて動けなくなった後甲田がナイフを買ってくるまでの間被告人をただ見上げていた乙山の精神的・肉体的苦痛には想像を絶するものがあり、一瞬のうちに命を奪われた丙村の無念さも計り知れない。そして、本件は共犯者甲田との共謀によるものではあるが、殺害行為は全て被告人が行っており、被告人の果たした役割は極めて大きいものである。
4 犯行結果について
前途のある二人の若者の生命を奪った本件犯行の結果は極めて重大であり、二人で生活していた乙山の母親や思いやりの深い妹を突然失ったその姉たちの精神的苦痛、当初乙山殺害犯と疑われ、周囲の目を気にして葬式等も思うようにしてやれなかった丙村の父親の無念さ、一生気が変になると困ると思って、息子の死に顔を見ることすら出来なかったその母親の悲嘆の深さは、察するに余りある。にもかかわらず被害者らの遺族に対し何らの慰藉の措置もとられておらず、当然のことながら、被害者らの遺族は、被告人の極刑を望んでいる。また、本件は大きく新聞報道されており、付近住民に与えた不安・衝撃も深刻である。
5 犯行後の状況について
被告人は被害者らの殺害後、第三者による殺害の痕跡を隠蔽するため、遺体にガソリンを掛けた上焼損しており、死者を冒すること甚だしい。また、被告人は、本件犯行の後、逃走資金の援助を渋る実父及び義母を共犯であるかのように非難する手紙を実父に送っているほか、別件で逮捕されるまで約三年間逃走生活を続けていたのであって、犯行後の情状もかんばしくない。
6 被告人の心情等について
重大な犯行を犯したにもかかわらず、被告人は公判において、本件犯行の態様を供述するものの、被害者の気持ちを考えたことはない、などと述べ、犯行を顧みて反省する心情になったとは認められない。また、被告人には複数の懲役前科があり、昭和五九年に恐喝罪により懲役五年に処せられたにもかかわらず、右刑の執行終了の約一年後には保険金殺人を企図し、更に約一年後に本件犯行に及んでいるのであって、被告人の反社会的な人格態度は前刑の服役等によってもなんら矯正されていないことが窺われる。
右の事情に加え、被告人の年齢も併せ考えると、被告人に対し、反省を促して性格の矯正をはかることによりその社会復帰を期待する方向で刑事政策上の目的を達することは極めて困難であるというほかない。
7 被告人にとって酌むべき事情
本件犯行は、乙山の雇傭、生命保険契約の締結、テレホンクラブを利用した丙村の呼出など、共犯者甲田の役割も不可欠であったこと、反省の言葉はないものの、被告人しか知り得ない犯行態様を公判において明らかにしていること、殺人罪の前科はないことなど、被告人のために斟酌することのできる事情も存する。
8 結論
しかしながら、被告人に有利な事情を最大限考慮しても、被告人の刑責は余りにも重大であり、罪刑均衡の見地からも、一般予防の見地からも、自己の生命をもって自己の罪を償うほかないといわざるを得ないのであって、主文のとおり判断した。
(求刑 死刑)
(裁判長裁判官・陶山博生、裁判官・重富朗、裁判官・進藤光慶)